調達の窓口を一本化
Trading company
複数メーカーの製品を一社でまとめて発注できる。見積・納期管理・クレーム対応まで商社が間に入る。
中間マージンを省く
Direct from manufacturer
メーカーと直接交渉するため、単価交渉の余地がある。ただし窓口・管理の工数は自社負担になる。
この記事を書いている会社
有限会社アルプス(東京都荒川区)は、1993年に自動車用の特殊工具の設計・開発から始まった機械工具の商社です。金属加工品の製作も手がけています。
- この記事の立場
- お客様の図面を預かり、協力工場で加工品を製作する商社の側から書いています。
- 加工
- 国内(新潟三条が中心)と中国・上海の協力工場が受け持ちます。
- 窓口
- 見積りのご相談から出荷まで、当社ひとつです。
「商社マージン=無駄なコスト」は本当か
直接発注派の論拠は「商社を通すと中間マージンが乗り、その分だけ割高になる」というものです。これは事実の一面ではありますが、見落としがちな視点があります。
商社のマージンは、単なる「抜き」ではありません。その対価として、購買業務の一部を商社がアウトソースで引き受けているという構造になっています。見積の手配、納期フォロー、品質クレームの一次対応、複数仕入れ先の管理。これらをすべて自社でやるとなれば、担当者の工数というコストが発生します。
ポイント
問うべきは「単価」ではなく「総コスト」
商社マージン < 直接発注で生まれる自社の管理工数コスト、となる場面は多い。特に品種数が多い会社ほどこの傾向が強まります。
商社 vs 直接発注、項目別の比較
| 比較項目 | 商社経由 | メーカー直接 |
|---|---|---|
| 仕入単価 | マージン分やや高め | 交渉次第で安くなる可能性 |
| 発注窓口 | 一社に集約できる | メーカーごとに個別対応が必要 |
| 見積対応 | 商社が複数メーカーに照会 | 自社で各メーカーへ個別依頼 |
| 納期管理 | 商社がフォロー | 自社で全件管理 |
| 品質クレーム | 商社が一次対応・橋渡し | メーカーと直接交渉が必要 |
| 小ロット対応 | 柔軟に対応しやすい | 最低発注数(MOQ)の制約あり |
| 技術情報 | 複数メーカー情報を横断提供 | そのメーカーの情報のみ |
| 代替品提案 | 欠品時に代替品を提案できる | 欠品時は自社で他社を探す必要 |
| 支払い先 | 商社一社に集約 | メーカーごとに個別請求・支払い |
商社が本当に担っている価値
商社の役割を「右から左に流すだけ」と思われることがありますが、実際には複数の機能を束ねています。
情報の集約と選別
複数メーカーの製品・在庫・価格情報を常に把握しており、最適な調達先を提案できます。購買担当者が個別に情報収集する手間を省きます。
緊急対応・欠品対策
急な欠品や仕様変更が発生した際、商社は複数の調達ルートを持っているため代替品の手配が速い。直接発注では自社で解決しなければなりません。
小ロット・多品種への対応
メーカーは一定数量以上でないと受けないケースがあります。商社は他社分とまとめて発注することで、小ロットでも現実的な単価を実現できます。
品質・クレームの緩衝
納品後に品質問題が発生した場合、商社が窓口となってメーカーとの交渉を代行します。直接発注では自社の担当者が矢面に立つ必要があります。
支払い・経理の簡素化
複数メーカーへの発注を商社一社に集約することで、請求書の数・支払い先・消込作業が大幅に減ります。経理コストの削減効果は見落とされがちです。
どちらを選ぶべきか。場面別の判断基準
多品種・小ロットの調達が多い
品種が多く1品あたりの発注数が少ない場合、直接発注の管理工数が膨大になります。商社への集約でコストと手間を同時に下げられます。
購買担当者のリソースが限られている
担当者が少ない中小企業では、発注・納期管理・クレーム対応を自社で全部こなすのは現実的でないケースが多い。商社に任せることで本来業務に集中できます。
技術的なサポートや代替品提案が必要
図面を見て材質・加工方法の提案ができる商社は、設計段階から相談に乗れるパートナーになります。メーカー直では自社製品の提案しかできません。
大ロット・定番品で安定した需要がある
品種が少なく毎月大量に発注する定番品は、直接交渉で単価を下げる余地があります。管理工数も限られるため、直接発注のメリットが出やすい場面です。
特定メーカーと深い技術協力が必要
共同開発・専用品設計など、メーカーとの密接な連携が必要な案件は直接関係の構築が有効です。商社を介すると情報の往復に時間がかかる場合があります。
定番品は直接、スポット・多品種は商社
実務上は「全部商社」「全部直接」ではなく、品目の特性で使い分けるのがもっとも合理的です。量・頻度・リスクの高さで判断基準を設けると管理しやすくなります。
よくある誤解
「商社を外して直接発注すれば確実に安くなる」は半分だけ正しい。単価は下がっても、自社の管理工数・リスク対応・経理負荷が増えれば、トータルでは割高になることがあります。削減できるコストと移転するコストを両方見積もることが大切です。
まとめ
要点
- 比較の軸:単価だけでなく、管理工数・クレーム対応・経理コスト・欠品リスクを含む「総コスト」で判断する。
- 商社が有利:多品種・小ロット・人手不足・技術サポートが必要な場面。マージン以上の価値を担っていることが多い。
- 直接が有利:大ロット・定番品・特定メーカーとの深い技術連携が必要な場面。管理コストを自社で吸収できる体制が前提。
- 実務の正解:「全部商社」でも「全部直接」でもなく、品目の特性・リスク・頻度で使い分けるハイブリッド調達が合理的。
調達方法の見直しや、商社・メーカー双方の活用バランスについてご相談があれば、お気軽にお声がけください。お客様の品目構成や体制に合わせた調達提案をいたします。



