快削アルミ合金のRoHS対応|A2011が使えなくなる理由と鉛フリー代替材の手配

マシニングセンタによる切削加工コラム

図面の材料欄に「A2011BD」が取り消し線で消され、横に「快削アルミ合金 ○○相当」と書き足されている。

購買や生産技術の担当者にとって、こうした図面をどう読み、何を手配すればよいかは迷いやすいところです。

この記事では、A2011が書き換えられる背景にあるRoHS指令の要点と、鉛フリーの快削アルミへ切り替えるときの手配の注意点をまとめました。

先に結論

A2011は
鉛入り
除外は
2027年6月まで
鉛フリー
快削材へ
ミルシートで
数値確認
  • A2011は切削性を上げるために鉛(Pb)を0.20〜0.60%含む合金です。RoHS指令の鉛の上限0.1%を超えます。
  • 鉛0.4%以下のロットに限り「切削用アルミの鉛」の除外規定で使えてきましたが、この除外は2027年6月に失効します。図面の書き換えはこれに備えた動きであることが多いです。
  • 代替は「鉛を含まない快削アルミ」です。A6262は鉛入りの快削材なので代替になりません。
  • 手配のときは、ミルシートで鉛の含有量を数値で確認し、発注書には鉛フリーであることを明記します。

この記事を書いている会社

有限会社アルプス(東京都荒川区)は、1993年に自動車用の特殊工具の設計・開発から始まった機械工具の商社です。金属加工品の製作も手がけています。

この記事の立場
お客様の図面を預かり、協力工場で加工品を製作する側から書いています。
加工
国内(新潟三条が中心)と中国・上海の協力工場が受け持ちます。
窓口
材料の読み替えのご相談から出荷まで、当社ひとつです。

RoHS指令とは。アルミ合金に関係する部分

RoHS指令は、電気・電子機器に含まれる特定の有害物質を制限するEUの指令です。現行は2011年の指令(2011/65/EU)で、2015年の改正でフタル酸エステル4物質が加わり、対象は10物質になりました。

制限されるのは鉛・水銀・カドミウム・六価クロム・臭素系難燃剤2種・フタル酸エステル4種の10物質で、上限は均質材料中0.1wt%(カドミウムのみ0.01wt%)です(附属書II)。

アルミ合金で問題になるのは鉛です。鉛を意図的に加えた快削アルミは、この0.1%を超えます。

除外規定

附属書IIIの6(b)-IIで「切削用途のアルミ中の鉛 0.4wt%以下」が除外されています。A2011のうち鉛0.4%以下のロットが使えてきたのはこのためで、規格上限の0.60%に近いロットは最初から除外の範囲外です。委任指令(EU)2025/2364で、この除外は2027年6月11日に失効すると決まりました(カテゴリー9の産業用監視制御機器とカテゴリー11は同年6月30日)。同指令の前文でEUは「鉛の代替材は市場に存在する」としています。

なお、日本のJIS C 0950(J-Moss)は、パソコンやテレビなど7品目について含有を表示させる制度です。使用を禁止する規制ではなく、RoHSとは別の制度です。

A2011とはどんな合金か

A2011は、JIS H 4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)に規定される銅系の快削アルミです。鉛とビスマスを少量含み、切りくずが細かく分かれるため、自動旋盤やNC旋盤で加工しやすい材料として長く使われてきました。

元素含有量(AA規格・質量%)
銅(Cu)5.0〜6.0
鉛(Pb)0.20〜0.60
ビスマス(Bi)0.20〜0.60
ケイ素(Si)0.40以下

A2011の主要元素。鉛の下限0.20%でも、RoHSの上限0.1%を超えます。

図面でよく見る「A2011BD」の「BD」は、JIS H 4040の形状記号で引抜棒を表します。丸棒や六角棒の指定です。後ろに「-T3」などの質別が付くのが正式な書き方です。

図面に「A2011BD 取り消し → 快削アルミ合金 ○○相当」とあったら

取り消し線と書き足しは、設計側がRoHS対応のために材料を変えたことを示しています。手配では書き足された側の材料を正として扱います。

確認すること

書き足された名称がメーカーの社内グレード名や略称の場合、JISの合金記号ではないため、どの材料を指すのかは図面の発行元に確認します。「相当」と付いていれば、同等の鉛フリー快削アルミで代替してよい、という意味で書かれていることが多いですが、これも発行元に確かめるのが確実です。

発行元に聞くときは、次の3点をそろえて質問すると一度で済みます。

  • 「○○」はどのメーカーのどの品名(または規格記号)を指しますか。
  • 「相当」として、鉛を含まない他社の快削アルミ(例: UACJの鉛フリー快削合金)で代替してよいですか。
  • 材料証明(ミルシート)と不使用証明書の提出は必要ですか。

材料名がJIS記号でない図面は、見積りの前に発行元へ意味を確認してから加工先を選ぶのが確実です。

鉛フリーの代替材をどう選ぶか

候補になる材料を、RoHSへの適合と切削性の観点で整理します。切削性は材料メーカーの資料に基づく定性的な比較で、数値の指標ではありません。

RoHS 非対応

A2011

従来の快削アルミ

鉛0.20〜0.60%を含む。鉛0.4%以下のロットだけが除外対象で、それも2027年6月まで。

RoHS 非対応

A6262

鉛入りの6000系快削材

規格で鉛0.40〜0.70%が必須。A2011の代替にはならない。

RoHS 対応

鉛フリー快削アルミ

UACJなどが公開する鉛フリー快削合金

鉛を加えず、スズやビスマスで切りくずを分断させる設計。A2011の代替の本命。

鉛フリー快削アルミの一例(UACJの公開情報)

UACJは、鉛を含まない快削アルミ合金として次の品名を公開しています(同社の製品ページによる)。

品名合金系(メーカー区分)鉛スズ
CB156-T82000系含まない含む
KS28S-T82000系含まない含む(Biも)
CB256-T82000系含まない含まない
KS26-T82000系含まない含まない(Bi添加)
KS69S-T86000系含まない含む(Biも)

出典: UACJ 製品情報「環境対応快削アルミニウム合金『CB・KSシリーズ』」。同ページの注記: スズ添加のCB156・KS28Sはアルコール含有液との接触で溶解が確認されている/2000系の快削合金は120℃以上で高温脆弱性を示す/KS69Sは160℃以上で低下傾向/使用環境によっては適合しない場合があるため事前相談を。

汎用のA6061やA5052も鉛を含まないためRoHSには適合しますが、快削材ではありません。切りくずがつながりやすく、自動旋盤での連続加工では工具やサイクルタイムに影響が出ます。材料単価は品名と数量で変わるため、加工費まで含めた比較は見積りで確認するのが確実です。

表面粗さの指示「▽▽」とRa 6.3

古い図面には、表面粗さが逆三角形の記号で書かれています。おおまかな対応は次のとおりです。

旧記号Ra(算術平均粗さ)の目安仕上がりのイメージ
▽25μm 前後(12.5〜25)荒加工。バイトの目が残る
▽▽6.3μm 前後(3.2〜6.3)中仕上げ。旋削・フライスの標準的な仕上げ
▽▽▽1.6μm 前後(0.4〜1.6)仕上げ面。精密な旋削やフライスで到達できる

出典: ミスミ 技術資料「表面粗さ」の対照表。範囲の取り方は資料により差がある。

Ra 6.3μmはアルミ合金の通常の切削で到達できる粗さで、鉛フリーの快削材でも、一般には切削のまま到達できる範囲です。

手配のときの4つの確認点

  • ミルシートで鉛の含有量を数値で確認する

    「RoHS対応品です」という口頭の説明だけで進めず、材料メーカーのミルシートを取り、鉛が0.1wt%以下であることを数値で確認します。

  • 不使用証明書や含有化学物質情報を書面でそろえる

    最終製品のRoHS適合宣言は製品メーカーが行います。そのための証拠として、材料側の不使用証明書やchemSHERPAなどの含有情報を、材料商社か加工業者から書面で取り寄せるのが確実です。

  • 発注書と図面に鉛フリーであることを明記する

    「A2011BD」のままでは従来材が手配されるおそれがあります。「鉛フリー快削アルミ(品名)」のように、品名と鉛フリーの両方を書きます。

  • ロットが変わるときに再確認する

    材料や商社の在庫都合で材料が変わる「サイレントチェンジ」に備え、量産の初ロットと材料ロットの切り替わりで、ミルシートの再確認や蛍光X線によるスクリーニングを行うと安心です。

よくある質問

QA2011をA6061に変えれば問題ありませんか。

ARoHSには適合します。ただしA6061は快削材ではないので、自動旋盤での連続加工では切りくずがつながりやすく、工具寿命やサイクルタイムに影響します。精密部品や数量が多い部品では、鉛フリーの快削材を検討することをお勧めします。

QA6262は代替になりますか。

Aなりません。A6262は規格で鉛0.40〜0.70%を含むことが定められた快削材で、RoHSの上限0.1%を超えます。

Qビスマス(Bi)はRoHSの対象ですか。

A対象外です。現行の10物質に含まれていません。A2011が問題になるのは鉛のためです。

Q自動車部品(ELV指令の対象)の場合は。

AELV指令も鉛を制限しています。切削用アルミの鉛0.4%以下については、2028年1月1日より前に型式認証された車両とその補修部品に限って除外が残ります(委任指令(EU)2023/544)。製品の用途と最終需要家の要求を確認してください。

Q図面の「相当」はどこまで許されますか。

A図面の発行元の判断によります。見積りの前に発行元へ代替可能な範囲を確認し、確認した内容を見積書やメールに残しておくと、あとで食い違いが起きません。

まとめ

要点

  • A2011の鉛はRoHSの上限を超える。鉛0.4%以下のロットを救ってきた除外規定も2027年6月に失効する。
  • 代替は鉛フリーの快削アルミ。A6262は鉛入りなので代替にならない。
  • 図面の略称やメーカーのグレード名は、発行元に意味を確認してから手配する。
  • ミルシートの数値確認と、発注書への鉛フリーの明記が手配の要。

材料の読み替えや、鉛フリー材での加工のご相談を承ります。
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参考にした一次情報