ボルト・ナット・加工品でよく見かける「ユニクロ」と「三価クロメート」。見た目は似ていても、法規制・防錆性能・コストに大きな差があります。選定のポイントを整理します。
六価クロメート処理
Hexavalent Chromate(Cr⁶⁺)
・光沢感のある青白い外観
・低コスト・広く普及
・RoHS規制対象(欧州・国内納品で要注意)
・六価クロムを含む有害物質
三価クロメート処理
Trivalent Chromate(Cr³⁺)
・やや白〜シルバーがかった外観
・RoHS・ELV指令に対応
・近年の標準仕様(自動車・電機業界)
・六価クロムを含まず環境負荷が低い
この記事を書いている会社
有限会社アルプス(東京都荒川区)は、1993年に自動車用の特殊工具の設計・開発から始まった機械工具の商社です。金属加工品の製作も手がけています。
- この記事の立場
- お客様の図面を預かり、協力工場で加工品を製作する側から書いています。
- 加工
- 国内(新潟三条が中心)と中国・上海の協力工場が受け持ちます。
- 窓口
- 表面処理のご相談から出荷まで、当社ひとつです。
そもそも「クロメート処理」とは
クロメート処理とは、亜鉛メッキ(電気亜鉛メッキ)を施したあとに行う化成処理のことです。亜鉛メッキだけでは表面が酸化しやすいため、その上にクロム化合物を反応させて保護膜(クロメート皮膜)を形成し、防錆性と外観を向上させます。
「ユニクロ」は処理業者や部品業界での通称で、正式には「光沢クロメート」または「六価クロメート(白色)」と呼ばれます。「三価クロメート」は六価クロムの代替として開発された処理で、環境規制に対応した現行標準です。
性能・規制・コストの比較
| 比較項目 | ユニクロ(六価) | 三価クロメート |
|---|---|---|
| 化学成分 | 六価クロム(Cr⁶⁺)を含む | 三価クロム(Cr³⁺)のみ。六価クロムを含まない |
| 外観・色調 | 光沢感のある青白〜銀白色。虹色の干渉色が出ることも | 白〜やや青みのある銀白色。光沢はやや控えめ |
| 耐食性 (塩水噴霧試験) | 白錆:48〜96h程度 赤錆:200h程度(皮膜厚による) | 白錆:72〜120h程度 赤錆:200〜300h程度(製品差あり) |
| RoHS指令 | 対象外(使用禁止) 六価クロムは規制物質 | 適合 六価クロムを含まない |
| ELV指令 (自動車部品) | 不可 自動車への使用は禁止 | 適合 自動車部品に使用可能 |
| コスト | 三価より若干安価なケースが多い | ユニクロとほぼ同等〜やや高め(設備・薬品コスト) |
| 熱耐性 | 高温(200℃以上)で防錆性が低下しやすい | 傾向は同様。高温用途は別処理を推奨 |
| 識別方法 | 目視での識別は困難。蛍光X線分析(XRF)で判別 | 同上。証明書(ミルシート・RoHS証明)で確認 |
| 主な用途 | 国内汎用ボルト・一般機械部品(RoHS非対象品) | 電気電子機器・自動車部品・輸出品 |
RoHS指令と六価クロムの規制
重要
電気・電子機器(EEE)に使用する部品でユニクロを指定すると、RoHS指令の違反になる可能性があります。欧州向け製品・取引先から「RoHS対応品」を求められている場合は、三価クロメートを指定してください。
ユニクロ(六価)の規制状況
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| RoHS指令(EU 2011/65/EU) | 六価クロムは規制10物質のひとつ。電気・電子機器への使用を原則禁止。 |
| ELV指令(廃車指令) | 自動車部品への六価クロム使用を禁止。自動車業界ではユニクロは事実上使用不可。 |
| 国内規制 | 化学物質審査規制法・労働安全衛生法で取扱い規制あり。一般機械部品は現時点で禁止されていないが、取引先の方針次第。 |
三価クロメートの対応状況
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| RoHS指令 | 六価クロムを含まないため適合。電気・電子機器部品への使用可能。 |
| ELV指令 | 自動車部品にも使用可能。トヨタ・ホンダ等主要メーカーのグリーン調達基準に適合。 |
| 証明書・トレーサビリティ | RoHS対応証明書・含有物質報告書(chemSHERPA等)の発行が可能。取引先への提出に対応しやすい。 |
どちらを選べばよいか
規制対象の有無と、取引先の要求仕様が判断の軸になります。迷ったときは三価クロメートを選ぶほうが、将来的なリスクを避けられます。
国内向け汎用機械部品
RoHS・ELV規制の対象外で、欧州輸出がない汎用機械装置の内部部品。コスト重視の大量発注。
既存図面・仕様の継続品
図面にユニクロ指定が明記されており、変更不要な継続生産品。ただし取引先への確認を推奨。
電気・電子機器の部品
RoHS規制の対象製品に組み込む部品。取引先からRoHS証明書の提出を求められている場合。
自動車・自動車部品メーカー向け
ELV指令・グリーン調達基準の対象品。Tier1・Tier2サプライヤーへの納入品はほぼ必須。
欧州・アジア向け輸出品
輸出先の規制動向が不明な場合も含め、三価クロメートを選んでおくと安全。トレーサビリティの担保も容易。
新規設計・新規図面
今から設計する部品は、将来の規制強化・取引先要求変更も見越して三価クロメートを標準指定するのが現実的。
まとめ:ユニクロ vs 三価クロメート
ユニクロ(六価)
- コストが若干安い
- 国内汎用品には引き続き使用可能
- RoHS・ELV規制の対象外用途に限定
- 欧州輸出品・自動車部品には使用不可
- 取引先の環境調達方針を必ず確認
三価クロメート
- RoHS・ELV指令に適合
- 電気電子・自動車業界では事実上の標準
- 新規設計品は三価クロメートが安全な選択
- RoHS証明書・含有物質報告書に対応
- コスト差はわずか。規制リスクと比べれば小さい
有限会社アルプスでは、ユニクロ・三価クロメートをはじめとする亜鉛メッキ部品の調達・加工品のご相談を承っています。図面をお送りいただければ、用途と規制要件に応じた表面処理の仕様を含めてご提案いたします。



